金とは
「元素番号79番」もしくは「AU」という言葉を聞いて何を意味するかがすぐに分かる人は少ないと思います。しかし実は誰でも知っているものを表す言葉、「金」のことです。金は昔から貴重に扱われている「元素」です。自然状態ではただ一つの同一元素で成り立っているとされる金という元素は、その色の美しさ、使いやすい性質、希少性などから、今までその価値がゼロになったことがありません。まさに「永遠の価値」だと思わせるものです。
金の特徴
まず色で言うと、黄色が代表的で最近ではホワイトゴールドやピンクゴールドも装飾品として人気です。性質的な面では、化学反応性がもっとも低い個体元素であり、空気や水に腐食されず、元の状態を維持する性質を持っているため保管は難しくありません。また、形を変えやすいという性質も持っているので様々な形に加工して利用することも出来ます。
このような金の価値の高さは、今から遡って遥か昔から証明され認められていたようです。人類の歴史の中で金は、様々な目的から人々に愛され続けた貴金属です。古代から貨幣として、資産の蓄積手段として、飾り物や芸術品などとして使用されてきたのはもちろん、現代のような科学や技術社会においても金は様々な分野で重要な役割を果たしています。金の歴史
このように、金は希少性を持ちながらも一度も歴史から姿を消していません。世界各地の人々が金という元素、あるいは金鉱石の中にちりばめられている小さな金を見つけてどうして同じく貴重だと思ったのかは別として、実際に地域に関わらず世界各地で常に金は貴重なものとして扱われながら人類と一緒にあり続けてきました。そのため世界中には金にまつわるエピソードや歴史資料が多数残っており、中には金が発端となって歴史が動いたとされている事件もあります。
これからは世界各地で金がどのような歴史を経てきたかについて、できるだけ時代の流れ順に沿って当時の状況やエピソードなどを調べてみることにしましょう。紀元前
金は紀元前3000年代から本格的に使われ始めたと言われています。メソポタミア人たちはこの時期に金で作った兜を作っていたとされています。しかしそれよりもはるか昔である紀元前6000年頃の金の装飾品が発見されたこともあるので、人類と金が初めて接点を作った時期は不明確です。
古代のエジプトでは太陽を神として崇拝したが、金はその太陽を象徴するものとして貴重に扱われていました。当時では一般市民が金を持つことが許されず王のみに許されたものでした。金を持っているものは王に差し出さなければならなく、隠し持っていることが見つかれば処刑されたという記録も残っています。金が太陽と王と同じ意味を持つ国だったのでしょう。そして、有数の金産出地域があった影響もあり紀元前3600年頃エジプトでは金を鉱石から分離し製錬する技術も開発されました。今に比べると非常に手間のかかる作業ではありましたが、ツタンカーメンのマスクや棺などには大量の金が使用されていました。みんながエジプト文明と言われて黄金色の遺産たちを思い浮かべるのも無理はないでしょう。錬金術
人々にとって金の価値がどれほど高かったかが実感できる言葉があります。「錬金術」です。別の金属から金を作りだすという言葉であり、1トンの金鉱石から3グラム程しか採取できなかった当時の社会から考えてみれば、金を人工的に作るということは世界観も変えられるような、夢のような話だったでしょう。エジプトで始まったこの錬金術のブームは1000年以上も続き、イスラム世界を経由しヨーロッパにまで渡って広く研究されました。特に中世ヨーロッパの時期に錬金術への研究は盛んでいて、学問としても認められていました。 18世紀に入って、他の物質から金を作り出すことは不可能なものであることが近代科学の父と呼ばれるアントワーヌ・ラヴォアジエによって証明されたため錬金術は姿を消すことになったものの、錬金術は当時の金の価値がどれほど高かったのかを証明しています。錬金術という夢のおかげで、今の「化学」の基礎が作り上げられたと言われているほどなので、錬金術に込めた人々の思いがどれだけ熱いものだったのかが少しは分かるような気がします。
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